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匿名カメラ

概要

本研究では,カメラを含めたセンサネットワークにおけるプライバシー保護問題の抜本的解決を目指しています.従来の映像に対する従来のプライバシー保護手法は,完全ではありませんでした.これに対して本研究では,顔のような特定対象のみを光学的に排除できる(すなわち正しく結像しない)カメラ 「匿名カメラ(anonymity camera)」を世界で初めて開発します.その効果を病院という極めて高い秘匿性が必要とされる場において実証します.

詳細

画像情報に含まれるプライバシー保護は,インターネット上での画像共有サービスの広がりと共に大きな問題となっています.例えば,車で撮影された町並み画像を閲覧できる商用サービスGoogle Street Viewでは,撮影された画像中の個人が特定できる顔や車のナンバープレートなどが問題となり,訴訟問題に発展しました.その結果,現在ではそれらに対して,画像にぼかしを入れるなどの対応が取られています.また,近年の防犯意識の高まりや交通渋滞の緩和などの目的で,警察など公的機関はもとより,マンションや一般家庭においても監視カメラの設置がすすんでいます.しかしながら,犯罪や設置者の利益とは無関係の被撮影者は,知らぬ間に自分の実写画像が撮影記録され,監視されているという不安感や拒絶感をこれら監視カメラに対して感じているのもまた事実です.元来CCTV(Closed-Circuit TV)と呼ばれているように,設置者のプライベートなネットワークで閉じている現在の監視カメラでは,映像の流出やプライバシーの管理は比較的容易ですが,さらなる利便性や新しいサービスを求めて,インターネットの様なオープンで大規模なネットワークに拡張されていくのはもはや必然で,監視映像のプライバシーの保護や管理は,今まで以上に重要な問題となると考えらます.

従来のプライバシー保護手法は,普通のカメラで撮影した画像について,その顔部分などプライバシー性の高い箇所を自動(もしくは手動)で検出・隠蔽していました.ここでの問題は,プライバシー保護の対象も一旦は完全に画像化されている点で,この事実は心理的抵抗を産むだけでなく,プライバシー情報流出といったリスクを孕んでいます.そしてこの不完全さが,カメラを含めたセンサネットワークによる見守り社会の発展を阻害していました.

これに対して,本研究では,プライバシー問題の抜本的解決を目指し,顔のような特定対象のみを光学的に排除するカメラ「匿名カメラ」を世界で初めて開発します.これはコンピュテーショナルフォトグラフィや符号化撮像の技術,および構造化特徴隠蔽の技術を応用し,撮影前すなわちCCDなどの撮像センサ上に結像する像を光学的に劣化・隠蔽させることで,個人を特定できる情報をそもそも撮影しない(できない)という,全く新しいアプローチに基づくカメラです.

提案する匿名カメラが開発できれば,映像による見守りの対象が格段に広がり,ICTによる安心・安全社会に寄与できる.すなわち,匿名カメラは,個人を特定できる情報を光学的に排除でき,それ以外の人の情報や,人を取り巻く環境が織り成す実世界情報の取得を可能となります.これにより,病院内で「(誰かはわからないが)人が倒れている」といった,匿名性を確保した上での異常状況検出が可能となります.

以上を要するに,本課題による匿名カメラにより,CPS(サイバーフィジカルシステム)研究およびその一形態としてのセンサネットワーク研究に常に絡むプライバシーと利便性の対立を本質的に回避することができます.その上で,一般市民の監視システムに対する不安感や不信感を払拭しセンサネットワークの価値観の変革を実現することを目指します.

発表文献