九州大学 大学院システム情報科学研究院 情報知能工学部門 イメージ・メディア理解研究室

検索対象となる情報は，オフィスや家庭のインターネット環境からWebに蓄積されているいわば過去の情報あるいは静的な情報でしたが，近年では，TwitterやFacebookをはじめとするSNSを通してWebにアップロードされた情報から，リアルタイムに近い情報を入手することができるようになりつつあります．

SNSを通して得られるリアルタイムに近い情報について考察すると，その多くは何らかのイベントがトリガとなり，多くのSNSユーザからアップロードされた情報であるといえます．例えば，バスや電車の悪天候時の運行状況や街頭イベントなどがそれに当てはまります．これらの情報は「ハッシュタグ」などと呼ばれる共通のキーワードを利用して，多数のユーザから投稿された同じテーマに関連する情報がとりまとめられています．従って，何らかのイベントが起こればこのような共通テーマに関する情報が多数の投稿者から得られるというユーザ参加型リアルタイム情報検索・収集の仕組みができつつあるといえます．

これに対して，本研究開発では，図1のように情報検索者が情報検索のトリガとなり，情報提供者を巻き込んでリアルタイム情報を入手するという情報検索サービスの実現を目指しています．このような情報検索が可能になれば，これまでのようにリアルタイム情報がWebに投稿されるのを待っているようなPassive型の情報収集ではなく，情報検索者自らが情報検索のためのトリガとなるActive型の情報収集を実現できます．そうすると，例えば「今，この場所で何が起こっているのかが知りたい」，「今，食堂は混んでいるか知りたい」，「なぜ渋滞しているのか道路の先の状況が知りたい」というようなリアルタイムな情報に対するユーザのニーズを直接情報検索のクエリとすることが可能になります．

我々はこのような新しい実世界情報検索サービスを「ヒューマンクラウドセンシング」と呼び，その実現に向けて研究を進めています．ヒューマンクラウドセンシングでは，サービスに参加するユーザを実世界の状況・情景に関する情報を収集するヒューマンセンサと見立て，情報検索者から発信される実世界の「今」の情報に対するクエリをヒューマンセンサから獲得します．スマートフォンを保有するユーザの高次視覚情報処理能力を利活用することで，情報検索者のクエリに関する実世界の情報を観察，理解，応答してもらうことが可能になると考えています．

戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE) 若手ICT研究者等育成型研究開発（フェーズⅠ）
「ヒューマンクラウドセンシングによるユーザ参加型実世界リアルタイム情報検索技術の研究開発」（研究課題番号：132110002）